ルイヴィトンで有名なLVMHが、アメリカのティファニーを買収すると発表したのが2019年のことでした。
フレッドやブルガリといったジュエラーを傘下におさめており、ルイヴィトンからもジュエリーラインは発表されていました。
それでもティファニーを買収するというニュースは、株式市場はもちろん、一般消費者にまで衝撃が走りました。

ルイヴィトンのジュエリーは、シンプルなものであれば20万円前後から用意はあるものの、おおむねハイジュエリーの展開です。
ルイヴィトンは、どこを目指しているのでしょうか。
当面の目標は、売上高ではなく、ハイジュエリーブランドとしての知名度と考えられます。
おそらく3年前には固まっていた戦略でしょう。
まず、コロナ禍でもある今年の新コレクションの価格帯です。
パンダンティフ LV ヴォルト・コレクションは、エントリーレベルの価格帯ではありません。

パンダンティフ LV ヴォルト ワン GM 896,500円 税込
売上高が欲しいのであれば、モノグラムのモチーフを転用し、ダイヤのついていないものを各国限定数を設定して販売すれば、あっという間に売り切れ、そしてプレミアムもついて取引されたことでしょう。
ルイヴィトンの知名度をもってすれば容易なことですが、安直な売上高の訴求には向かいませんでした。

ふたつめに、大粒原石の買い入れです。
これは、かつてハリー・ウィンストンやグラフ・ダイヤモンズが行っていた方法でもあります。
上の画像は、ボツワナの鉱山で発見された1,758カラットのダイヤの原石です。
英国王室のカリナン・ダイヤモンドに次ぐ、史上2番目の重さ(カラット)です。
御覧のとおり、表面はカーボンに覆われており、ここからどのようなダイヤモンドが現れるのか、又は現れないのかは今のところ神のみぞ知る状態です。
Seweloと名付けられたこの原石をカットするため、ルイヴィトンは、ベルギーの研磨マスターと研究を続けています。
2020年、原石買付は、これだけではありません。

こちらも、ルイヴィトンが買い付けた549カラットの原石です。
2020年2月、またしてもボツワナで採掘されたSethunyaと名付けられたこの原石は、研磨され、VIP顧客向けに販売されます。
そしてティファニーがハイジュエラーへの階段を駆け上がるのに重要だったのが、フランチェスカ・アムフィテアトロフの抜擢です。

彼女は日本生まれです
「あれ?」と思われたあなた、大正解です。
2016年3月に日本で公開されたティファニー初のドキュメンタリー映画「ティファニー ニューヨーク五番街の秘密」に出演していました。主演と言ってもいいでしょう。
2013年にティファニーへ参加した彼女は、映画が公開されて間もなく、ティファニーから離れます。
2017年、パリのヴァンドーム広場にルイヴィトンは店舗をオープン。
満を持して2018年、フランチェスカのルイヴィトン参加が発表されました。
ルイヴィトンは、ハイジュエラーを目指していることがわかります。
LVMHは、既にフレッド、ショーメ、ブルガリといったジュエラーを傘下に収めています。
ティファニーの買収は、その知名度からセンセーショナルに取り上げられましたが、「売り上げの弱いジュエリー部門をかさ上げする」目的ではないとも言えます。
ルイヴィトンは、ルイヴィトンとしてハイジュエラーになることを期待して見守っていきたいですね。
