ティファニーの戦略

タイトルの大きさにタイプする手が震えますが、ティファニーの日本限定品について取り上げます。

ティファニーの2020年ホリデー商品が発表されました。
ホリデー商品というのは、おおよそ112週目の週末から売り出されるクリスマス向け商材です。
ティファニーは、さらに「日本限定」です。
人気のTスマイルから、ピンクサファイヤの「ミニ」ペンダントです。
ホワイトゴールド、価格はおよそ10万円。

CREA WEBより
ティファニー T スマイル ミニ ペンダント 104,000円
18Kホワイトゴールド、ピンクサファイヤ
2020年11月14日(土)発売

ティファニーのプロダクトライフサイクルは、他ブランドに比べて早いのが特徴です。
廃番になるのが早い、と読み替えることが出来ます。
つまり、売れ行きのスローなアイテムはすぐに廃番になり、新しい商品が登場します。

新しい商品を開発するにあたり、もちろんデザイン画からスタートすることもありますが、売れ行きのいいデザインから派生したアイテムを作るケースも多くあります。
既に一定数売れている実績があり、生産ラインやコストの計算も容易なため、企業側にとっては開発のステップが少なく済みます。

Tiffany Official Webより

Tスマイルには、大元となる既存デザインがあります。
ティファニーはこれまでにも、メタル違い(WG, PG, YG等)、サイズ違い (ラージ、スモール、ミニ等)、ストーン違い (ダイヤモンド、サファイヤ、ターコイズ、オニキス等) を発表しています。
これらを組み合わせることで、無限に「新作」を生み出すことが可能です。

デザイン画からはじまる完全なる新作の場合、海外ブランドでは、たいていは大きめ(華美と言い換えることも出来ます)のデザインで登場します。
その方が写真映えしますし、欧米人の体格や骨格にマッチするためです。


日本市場へ目を移しましょう。
日本では、欧米人向けの骨格でデザインされたものをそのまま着用することは難しいケースがほとんどです。
そして、スモールやミニ、マイクロ といった小型版をアジア市場(といってもほとんどは日本向け)に開発します。

これらもまた、企業側にとっては願ったりかなったり。
大抵の小型版は、低価格に抑えることが出来るからです。
特に日本のように、多人数に同じ商品が売れやすい傾向の国では、薄利多売でもスモールは出したいものです。

さて今年のホリデー商品、ティファニーのターゲットが、20代から30代前半であることが読み取れます。

Tスマイル→既存売れ筋商品
ミニ→小型版
残るポイントは、ホワイトゴールドとピンクサファイヤ、そして価格 です。

まずはピンクサファイヤについて考えましょう。
ピンク、これは日本人女性向け商品の鉄板です。
日本人女性への鉄板でもあり、買い求めるであろう男性への鉄板でもあります。
アジアを含む海外でここまでピンクが特別扱いされる国は、例を見ません。
女の子はピンク、という長年に渡る刷り込みの結果かもしれませんね。

そしてWG、ホワイトゴールド。
20151月から今日に至るまで、ゴールドのほうがプラチナより高いという状態が続いています。
生産コストを下げるのであれば、今年のペンダントはプラチナのほうが安かったでしょう。
しかし、ここでゴールドを使うのには戦略があったと考えられます。

それは、ブライダル市場です。
ティファニーは、ゆりかごから墓場までの展開です。
ベビースプーンにはじまり、ティーン向けにはシルバー、そしてゴールド、エンゲージにはプラチナ枠のダイヤモンドリングです。
ブライダルにはプラチナ。
ファッションジュエリーにはホワイトゴールド。
それぞれの貴金属が持つイメージに起因する事情があると見受けられます。
実際にゴールドのほうがプラチナより加工しやすい、工賃が安価に済むという一面もあったでしょう。

そして最後は、価格です。
104,000円、これはギリギリの価格設定だったでしょう。
ティファニーは、様々な価格帯を用意できるブランドです。
そこで「ティファニーをもらった」「ティファニーを買った」と思える価格設定が必要でした。
ターゲットが20~30代、お金を出すのは社会人 というのであれば、そこは2万円のシルバーではダメでした。
ターゲットを絞ることは、おのずと価格帯も決まることになります。
もしこれが学生メインで考えるのであれば、10万円ではない商材になったでしょう。
もちろん40代で男性から女性へのギフト戦略であれば、また違う商材が必要となります。

Tスマイル→既存売れ筋商品
ミニ→小型版
ホワイトゴールド→ブライダル市場、ハイジュエリーとの住み分け
ピンクサファイヤ→日本のピンク信仰
価格→ターゲット層にティファニーを買った!もらった!と思わせることの出来る絶妙ライン
そして日本限定です。

他ブランドだって同じようなステップで商品開発しているのだろう、と思われるでしょうか。
そうでもないのですよ。
これについて書くと3GBぐらい書いてしまうので、また別の機会に。

LVMH買収前最後のティファニーのホリデー商品も、品薄になること必死の様相ですね。
1114日(土)発売開始です。
品切れになる前に実物を見に行ってみませんか。

投稿者: Michie MORISHITA

ジュエリー、主にダイヤモンドの仕事をしてきました。 サプライズプレゼントを成功させるポイント、将来に備えたお買い物のお手伝いが必要なときにはお気軽にお声がけください。 ひとりでジュエリーショップに入りにくい!という方のご相談も承ります。

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